「洪水による被害評価と当面の支援について」 国連評価調査団による事前調査報告
DEMOCRATIC PEOPLE'S REPUBLIC OF KOREA
FLOODS
DHA GENEVA SITUATION REPORT NO.9
23 OCTOBER 1995
DHA RELIEF COORDINATION
1. DHA RELIEF COORDINATION TEAM, AFTER HAVING SPENT TWO DAYS IN GENEVA FOR BRIEFING, LEFT TODAY FOR PYONGYANG TO STRENGTHEN IN-COUNTRY RELIEF COORDINATION AND MONITORING CAPACITIES. TEAM WILL ARRIVE ON 24 OCTOBER AND SUPPORT DHA/UNDP RESIDENT REPRESENTATIVE INITIALLY FOR THREE MONTHS. DHA TEAM, FINANCED BY SWISS GOVT, CONSISTS OF THREE EXPERTS IN EMERGENCY RELIEF MANAGEMENT, LOGISTICS, AND MONITORING. TEAM WILL CLOSELY LIAISE WITH UN AGENCIES AND OTHER INTERNATIONAL ORGANIZATIONS ALSO INVOLVED IN RELIEF EFFORTS.
2. DHA, IN COOPERATION WITH UNDP IN DPRK AND CHINA, HAS COMMITTED ALL FUNDS BEING CHANNELLED THROUGH DHA TO PROCURE BLANKETS, QUILTS CLOTHING, AND KITCHEN UTENSILS LOCALLY OR FROM CHINA. FIRST TWO CONSIGNMENTS HAVE ALREADY BEEN HANDED OVER TO DPRK GOVT FOR DISTRIBUTION. REMAINING GOODS ARE SCHEDULED TO BE DELIVERED THIS WEEK.
RELIEF ACTIVITIES BY UN AGENCIES
3. FOLLOWING APPROVAL OF WFP EMERGENCY OPERATION (EMOP) ON 6 OCTOBER, WFP IS DISPATCHING FOUR-PERSON TEAM TO ASSIST IN PLANNING AND MONITORING OF FOOD AID ASPECTS OF EMERGENCY RELIEF EFFORTS. COUNTRY DIRECTOR IS SCHEDULED TO ARRIVE ON 4 NOVEMBER. IN EMOP WFP APPEALS FOR USD 8.85 MILLION TO PROVIDE 20,250 TONS OF RICE AND 675 TONS OF VEGETABLE OIL, INCLUDING COSTS OF OCEAN TRANSPORT AND MONITORING/LOGISTICS SUPPORT. THIS IS TO COVER FOOD REQUIREMENTS OF 500,000 MOST AFFECTED PERSONS FOR 90 DAYS. EMOP OPERATION IS CONTINGENT ON DONOR CONTRIBUTIONS.
4. WFP HAS ALREADY PROCURED, WITH ITS ADVANCE ALLOCATION OF USD 50,000, 140 TONS OF RICE IN BANGKOK IN COLLABORATION WITH CARITAS. RICE IS BEING TRANSPORTED BY DPRK VESSEL FREIGHT-FREE AND IS EXPECTED TO ARRIVE ON 12 NOVEMBER. IN ADDITION, WFP HAS DRAWN USD 2.2 MILLION FROM ITS INTERNATIONAL EMERGENCY FOOD RESERVE (IEFR) TO COVER PROVISION OF 5,000 TONS OF RICE, EXPECTED TO ARRIVE ON 20 NOVEMBER. IEFR FUNDS DRAWN ARE TO BE REPLENISHED BY DONOR CONTRIBUTIONS.
5. UNICEF HAS SO FAR ARRANGED, WITH ITS RE-PROGRAMMED COUNTRY PROGRAM FUNDS OF USD 250,000, PROVISION OF 250,000 SACHETS OF ORS AND 250 TONS OF CORN SOYA BLENDS. UNICEF PLANS TO SEND MISSION ON 6-10 NOVEMBER, FOLLOWED BY FIELDING OF PROJECT OFFICER FOR SIX MONTHS TO MONITOR OPERATIONS.
6. WHO HAS SO FAR DELIVERED SIX TONS OF MEDICINES AND IS ARRANGING TO PROVIDE FIVE TONS OF BLEACHING POWDER. WHO MISSION IS IN PYONGYANG UNTIL END OCTOBER FOR PLANNING OF NEXT BIENNIUM BUDGET, WHICH WILL COVER ASSISTANCE TO FLOOD VICTIMS.
7. UNFPA HAS DIVERTED USD 150,000 OF ITS ON-GOING COUNTRY PROGRAM FOR REHABILITATION OF HEALTH AND FAMILY CLINICS DAMAGED BY FLOODS.
INTERNATIONAL RESPONSE
8. IFRC HAS PROVIDED BLANKETS AND QUILTS AND SENT TWO-PERSON DELEGATION TO MANAGE RELIEF OPERATIONS. MSF IS TO SEND TEN-PERSON TEAM TO MONITOR PROVISION OF MEDICAL SUPPLIES.
RELIEF NEEDS
9. AS STATED IN PREVIOUS DHA SITREPS AND UN APPEAL, DPRK GOVT STRESSES THAT FOOD IS PRIORITY CONCERN. WFP CONFIRMS THAT FOOD REQUIREMENTS OF VICTIMS HAVE NOT YET BEEN SUFFICIENTLY MET AND ASSISTANCE IS URGENTLY NEEDED.
UPDATE ON CONTRIBUTIONS
10. FOLLOWING CONTRIBUTIONS HAVE BEEN REPORTED TO AND CONFIRMED BY DHA SINCE SITREP NO. 8.
UN SYSTEM: UNICEF USD 250,000 DIVERTED FROM UNICEF COUNTRY PROGRAM WFP USD 2.2 MILLION DRAWN FROM INTERNATIONAL EMERGENCY FOOD RESERVE (TO BE REPLENISHED WITH CONTRIBUTIONS/ PLEDGES) GOVERNMENTS CHINA RELIEF GOODS WORTH USD 3,610,716 (RMB YUAN 30 MILLION) FINLAND USD 22,727 (FIM 100,000) THROUGH DHA/WFP GERMANY BABY FOOD WORTH USD 68,027 (DM 100,000) IRELAND USD 50,000 THROUGH IFRC MALAYSIA USD 25,000 NETHERLANDS USD 62,893 (NLG 100,000) THROUGH NETHERLANDS RED CROSS SWEDEN USD 109,140 (SK 800,000) THROUGH UNICEF UNITED KINGDOM USD 39,605 (PDS STLG 25,000) THROUGH DHA (BRINGING TOTAL UK CONTRIBUTION THROUGH DHA TO USD 116,528). USD 39,065 (PDS STLG 25,000) THROUGH BRITISH RED CROSS SOCIETY/IFRC. NGO'S ROTARY INTL/ZH USD 5,000 THROUGH DHA.
11. DHA IS PREPARED TO SERVE AS A CHANNEL FOR CASH CONTRIBUTIONS TO BE USED DURING IMMEDIATE RELIEF PHASE. FUNDS ARE SPENT IN COORDINATION WITH RELEVANT ORGANIZATION OF THE UN SYSTEM. DHA PROVIDES DONOR GOVTS WITH WRITTEN CONFIRMATION OF UTILIZATION OF FUNDS CONTRIBUTED.
12. TRANSFERS OF FUNDS TO DHA SHOULD BE MADE TO DHA ACCOUNT NUMBER CO-590.160.1 AT SWISS BANK CORPORATION, CASE POSTALE 2770, CH-1211 GENEVA 2, WITH FOLLOWING REFERENCE: DPR KOREA - FLOODS, DHA-GENEVA.
13. FOR COORDINATION PURPOSES, DONORS ARE REQUESTED TO INFORM DHA-GENEVA, AS INDICATED BELOW, OF BILATERAL RELIEF MISSION/PLEDGES/CONTRIBUTIONS AND THEIR CORRESPONDING VALUE BY ITEM.
+ DEPARTMENT OF HUMANITARIAN AFFAIRS - GENEVA +
TELEPHONE NO. +41-22/917.12.34
IN CASE OF EMERGENCY ONLY: TEL NO. +41-22/917.20.10
DESK OFFICER: MS. K. GOTOH, DIRECT TEL. +41-22/917.12.58
PRESS TO CONTACT: MS. M. MOULIN-ACEVEDO, DIRECT TEL. +41-22/917.28.56
TELEX: 414242 DHA CH
FAX: +41-22/917.00.23
ELECTRONIC MAIL: INTERNET DHAGVA AT UN. ORG
DPR 310 KOR 95(1)
国連人道援助局
1995年9月12日
概論 1 この報告書は1995年8月29日から9月9日まで朝鮮民主主義人民共和国(北 朝鮮)での調査 に基づいて作成された。 以下の国連機関の代表が調査に参加し、国連 の援助のもと報告書の作成に必 要な情報を提供してくれた:国連人道援助局(UNDHA)、 国連開発計画 (UNDP)、世界保健機構(WH O)、国連児童基金(UNICEF)、世 界食料計画(WFP)、 食料農業機構(FAO)。 全般状況 2 北朝鮮の人口は2、120万人。 人々は九つの「道」と三つの大都市圏に住む。 これら12の 行政区域は200の「郡」と4、000の「里」に分かれる。「里」は 地方のにおいて450ー500 の世帯からなる最も小さな行政単位である。 3 三度に及ぶ(7月7ー15日、7月26ー8月12日、8月17ー20日)未曾有 の豪雨により、 北朝鮮政府は国土の75%に相当する八つの道において、145の郡と 市が洪水に見舞われたと報告し た。 政府は520万人が被災したと推定し、およそ5 0万人、約10万世帯が家を失ったとしている。 洪水はまた農業や生産、病院や保健 機関といった重要な施設、それに水道、工業施設と共に道路、橋、 灌漑水路といったイ ンフラストラクチャーにも深刻な被害を引き起こした。 当初死者はないという見 込み だったが、後に政府は60ー70人の死傷者と多くの行方不明者が出たと報告している 。 政府は 洪水による被害総額は150億ドルを上回ると見ている。 4 被害地域における家を失った人々の数については別紙1を参照。 北朝鮮政府は被 害を受けたすべ ての道の詳細な被害状況を発表した。 このリストはDHAにて入手可能 。 5 北朝鮮政府の要請により、1995年8月29日、4人から成る国連災害評価調整 チ ーム(UNDAC)が現地の調査活動を支援し、在平壌(ピョンヤン)国連調整官と国連開 発 計画(UNRC/UNDP)の代表部を補強するために、国連人道援助局によって派遣された。 国 連調査団にはWHO, UNICEF, WFP, FAO などの代表が加わっている。 これらの機関の参 加の下に災害 管理チーム(UNDMT)が UNRC/UNDPの事務所に設けられた。 6 九月一日から六日の間、北朝鮮政府の救援機関の関係者と共に国連調査団は黄海北 道や平安北道、 慈江道といった被害を受けた地域を視察した。 視察した地域は新義州 (シヌィジュ)市周辺の中国と の国境沿いにある鴨緑江流域、博川(パクチョン)市と 安州(アンジュ)市周辺の清川(チョンチョン) 江、平壌の南にある地域、峯泉(ポン チョン)郡と麟山(リンサン)郡周辺、それに清渓(チョンゲ) 里である。 7 これらの地域では農業やインフラに深刻な被害が及んだ。 これらすべては河川の ある谷や氾濫原 でおきており、それが被害地域の主たる地形的特徴である。九月六日ま でにこのような地形以外での被 害は見受けられていない。 河川地域において典型的な 被害は鉄砲水によるもので、一部の建造物は深 刻な被害を受け、穀物や家畜が流されて しまった。 ある地域では、農地が何層もの砂や砂利によって 覆われた。 中小規模の 灌漑や貯水地は完全に破壊された。 氾濫原の地域では作物が長期間覆水した ので、ト ウモロコシや他の作物は灌水し、米穀類は腐っていた。これらの地域では建造物の被害 は比較 的少なく、家畜も殆ど失われていない。 8 政府のこの緊急事態に対する対応は早かったと見られる。 人々を救出するため軍 が動員され、彼 等を安全な場所へと運んだ。 臨時の収容施設が設けられ、食料や衣類 、安全な水の供給に注意が払わ れた。 殆ど家畜はみられなかったが、全ての村は新し い野菜畑を耕していたし、人々は橋などの交通 期間を復旧するための再建事業や、被害 を受けた家や公共施設の清掃や修復に携わっていた。 9 国連調査団が調査して判明した被害は、つぎの3タイプに分けられる。 a. 洪水により家を流 失した10万世帯の人々への直接的影響; b. 政府推定による190万トンに及ぶ農産物への被 害; c。生産施設とインフラの破壊による北朝鮮経済への長期にわたる影響。 10 これらのタイプのなかで調査団は最初の二つに焦点をあて、最初のタイプの被災 者である、洪水 によって深刻に被害を受けたと考えられる10万世帯、50万人に救援 物資を与えることを最優先とし た。 11 政府の公式発表によると、延べ9万6、348棟の家屋が被害を受けた。 12 現地の洪水の厳しさや性格によっては、家屋の被害状況はさまざまである。最悪 のケースではダ ムが決壊し、鉄砲水に襲われ、家全体と家具等が流された。 他の地域 では家は浸水したが家材類は大 丈夫であった。 殆どの被害は家屋の浸水によるもので 、家や家具に被害をもたらした。 国連調査団 によって、平安北道の新義州や義州(ウ イジュ)、黄海北道の麟山(リンサン)、銀波(ウンパ)、新 坪(シンピョン)郡では さらに大きい被害が確認されている。 13 被災者はいろいろな方法で避難している。 あるものは親類の家に泊り、またあ るものは学校な どの公共施設に避難した。 家を失った数多くの人々は、普段、種子栽 培などに使われるビニールシー トの一時しのぎの避難所に宿泊している。 14 気候は洪水後、暖かさを保っているものの、秋になるにつれ寒くなり初めている 。 11ー3月 の冬の間、特に寒い時期を迎える。 最も寒い一月の平均気温はマイナ ス5度からマイナス20度であ る。 15 被災地では住宅の再建や復興の活動がかなり活発になっているが、いくつかの地 域では再建速度 は遅い。 避難所をしっかり作り冬支度をし、暖かい衣類や毛布が支給 されない限り、被災者の中には 冬の訪れとともに過酷な日々に遭遇する者も出るだろう 。 水道と衛生設備 16 地方の水道は中央集中ポンブ、浄化、配水パイプシステムに頼っているが、それ もかなり破壊さ れた。 政府のデータによると102ケ所の貯水池と2、804ケ所の ポン プ場に被害が出たとしている。 17 被害地域の多くの世帯が手動ポンプを使えるものの、掘込み式のトイレの浸水や 仮設住宅の建設 水源を、洗濯や家庭排水のために使用することにより、飲料水供給上の 清潔問題が発生しているし、下 痢性の伝染病の危険がある。 18 現在、北朝鮮政府の下痢性の伝染病に対処する能力は弱い。 経口再水和清生産 の工場は被害を 受け現在は機能していない。 保健省は経口再水和清の予備は多くはな いとしている。 食料 19 政府の統計によると年間の穀物必要量は763万9、000トンになる。この必 要量にたいして 洪水以前の1995/96年度穀物生産量の見積りは566万5、00 0トンであり、197万4、0 0トンの不足である。(これは年間必要量のおよそ25 %であり、全国の三か月分の供給量に値する。) 20 過去には197万トンあまりの構造上の不足は、旧ソ連とのバーター貿易から得 られた食料(お もに麦)をはじめ、商業的な輸入によって賄われた。 21 政府は1995年の洪水によって、190万1、000トンの穀物(108万3 、000トンの 米、81万8、000トンのトウモロコシ)の損失が出たとみている。 1995/96年度の全体的 食料不足は387万5、000トンに及ぶ模様である。 これは年間穀物必要量の半分に当たる。 調 査団はこれら政府の行った見積りを独自 的に立証する手段は持ち合わせていない。 22 洪水前の年間生産量(566万5、000トン)の見積りは最近の趨勢に沿って いるように見え るが、少しばかり超えている可能性もある(1995/96のFAOの 食糧概要による)。 過去五年 間(1990ー94)における穀物生産量の自系列(t ime series)の提供を要求したが、この報告書を 作成している段階では何の提供もなか った。 23 年間穀物総生産量763万9、000トンのうち486万9、000トンは人に よる消費(64 %)であり、120万トンは工業用材料(16%)に使われ、140万 トンは飼料用(18%)である。 工業用の原料は主に子供用食品、コーンオイルやア ルコールといった特別な食品に使われている。 24 政府が示した食用穀物486万9、000トンは、一人当りの一日消費量630 g に相当する(人口2、120万人とした場合)。 これは世界の標準値に照らし合わせ た場合高い水準 ではあるが、厳寒の間、食生活の中での穀物の重要性と、その間人々が 必要とするエネルギーを考慮し た場合説明できる数値である。 25 推定される全体的食料不足(387万5、000トン)は、89万3、000ト ンの輸入によっ て一部解消される(日本と韓国からの米とそれと同時にタイがらの輸入 )。 しかし残り300万トン の1995/96年度の純推定穀物不足量がある。 こ れは年間必要量のおよそ40%に相当する。 26 調査団の現地訪問中、ある地域ではサトウモロコシや雑穀などの小さな畑が見受 けられた。 こ れら少量の穀物類は総合的な穀物生産見積りには考慮されていないよう である。 ただし、それらは地 方においてはサツマイモといったような他の農作物と同 様、主食として重要である。 27 緊急時における体系的な栄養測定は不可能ではあるが、国連調査団はいろいろな 環境の中での子 供たちを観察することが出来た。 就学前児童の栄養摂取状態(すでに 限界に達しているが)はあらゆ る食料の不足により悪化している。 家庭や保育園、そ れに普段子供たちを養育する施設ではトウモロ コシ以外のものは摂取していない。 健 康問題、特に呼吸器官の障害が栄養状態をさらに悪化している ように見える。 国連調 査団によって確認された仮設住宅に入っている比較的少数の子供は衰え、発育 を妨げら れ、寒い冬が近づくにつれ、伝染病にさらされる深刻な問題にあたっている。 28 被害を受けた地域の子供たちは、トウモロコシなどの穀物で作った薄めたお粥を 食べている。 製粉したトウモロコシが普段使われるが、洪水により製粉所を動かす電 力は破壊されてしまった。 29 さらに年長の子供たちに対する心配は学校での給食の不足である。 被災地の多 くの学校は九月 一日に新学期を迎えたものの、一部の地域では普段行われている給食を 供給できないところもある。 公衆衛生 30 洪水による人々の健康への影響は三段階に分けられる。 第一段階は災害の直後 の時期であり、 主な問題は死傷者であるが、しかしその数字は決して高くない。 この 時期は調査団がいた時には過ぎ ていた。 第二段階は3ー5日過ぎたあとに始まり、1 0日間でピークに達する。 ここでは暑さや寒 さなどに関連する病気や、安全性に問題 があり、不足する給水による単純な下痢、仮設もしくは地元の 避難所での密集によって 起こるARIなどが特徴である。 もし水が汚染された場合、赤痢、肝炎、チ フス、コ レラといった水や食物を媒介する恐ろしい病気が、ある人口集団の中でこの時期の終わ り頃に 発生するかもしれない。 もし人が密集し、免疫低下が起こり、かなりのレベル の栄養不良の場合、麻 疹もこの時期に発生するだろう。 この段階は国連調査団が到着 したときにピークに達していた。 だ からこれらの病気が発生しようものなら、到着し た週のうちにその原因などが報告されているはずであっ たが、今回このケースはあては まらなかった。 31 第三段階は約2週間後に始まる。 そしてこの段階は災害時という特別な状況、 人口の特徴、洪 水以前の公衆衛生の施設状態、気候と環境によって、 その被害の特徴 と期 間がさまざまである。 その特徴は動物などを媒介する病気や、外来の病気、栄養不良 の発生である。 また第一段階、第二段階でみられたのと同じような病気も発生する。 32 現在この国が置かれた複雑な状況を考慮すると、今後数ヵ月間発生しうる健康問 題を的確に予知 することは不可能である。 そのような場合に優先すべきことは、疫学 監視体制が病気が発生した場合、 すぐにその発生を探知する能力を持つことと、担当者 が敏速に対応する技術と手段を持つことである。 農業 33 北朝鮮政府によると、合計119万5、000ヘクタールの耕地が被害を受けた 。 この耕地の 一部は砂や砂利に覆われるか、水によって表土が流され、再使用不能に なった。 したがって、穀物生 産の損失を補うために、残された土地での農業生産を増 やす試みが必要ということになる。 34 食料に関して政府は、米生産減少は108万3、000トン、トウモロコシ生産 減少は81万8、 000トンと見ており、貯蔵施設の崩壊による貯蓄穀物の損失は62 万6、200トンとみている。 35 洪水被害地域を直接訪れながら、国連調査団は全農業地域のおよそ35ー40% を見回った。 北朝鮮で訪れた場所は今回最も甚大な被害地域であった。 一方、他の 被害地は域限定された、あるい はより小さい規模での損害であった。 36 今回見回った地域からこの国の総農業地域に与えた損害を推定して見た。 合計 107万5、0 00トンから145万トンの穀物の損失と見られる。この数字は全国農 地の15ー20%にあたる農作 物が損失したと見ている。 すなわちこの査定は政府提 供の情報と一致する。 政府は貯蔵中の穀物の 損失を62万6、000トンと見ている 。 37 政府が見積もった1994年の120万トンの米の損失はひょうの被害によって 起こったもので あり、間違いなく1994ー1995作物年度の食料供給に繰越し影響 を与える。 38 最近の穀物85万トンの輸入を考えると、去年からの繰越損失は35万トンであ り、1995/ 96年度の収穫期には相当の食糧不足が予想される。(去年の120万 トンの損失 −(引く)85万 トン。) 教育 39 朝鮮民主主義人民共和国は11年義務教育システムをもつ。 政府は1万6、0 00の幼稚園の うち4、120ケ所あまりが洪水によって深刻な被害を受けたとし、同 時に 4、956の小学校のうち2、290校が、4、809の中学校のうち2、290校が 被害を受けたと 見ている。(多くの郡では小学校と中学校は建物を共有している。) 政府はこの建物に対する被害だ けで1億400万米ドルとみている。 加えて政府は7 20万米ドル相当の学用品や設備が破壊された と推定している。 40 国連調査団の訪問中、九月一日に新学期が始まった。 被災地の多くの学校は受 けた損失にもか かわらず再開した。 調査団は訪れた際に学校関係者に質問をしなかっ た。緊急支援 41 国際的に注意すべき最も重要な分野は、食料事情や医療分野を始めとする主要サ ービスの復旧を 含む、最も深刻な被害を受けた10万世帯の人口に対する当面の対応で ある。 42 この緊急事態に対する最初の対策として、また洪水によって被害を受けたあらゆ る分野でさらに 詳しい調査が行われるまで、国連は先に述べた調査結果に沿って次のよ うな緊急援助対策を勧告する。 避難所 43 政府は冬の到来以前に家を失ったすべての人々に住宅を提供する公約をした。 しかし、冬服、 毛布、キルテイング、家庭用品などを支給する上で国際援助が必要であ る。 また政府は北朝鮮で必要 な衣類を生産するための布地を要請した。 これらの品 々は国内の市場では入手不可能だが、北朝鮮の 条件に適用する品々は中国で入手出来る 。 水道と公衆衛生 44 被災した都市と地方では、水道管による水道の汚染が同じ程度であるとみなされ ている。 政府 は家庭用水の処理のために塩素を要請している。 食料 45 1994年の農作物生産の不足により食料は不足している。 現時点で米は、日 本、韓国、タイ から輸入されている。 この緊急事態によって要求される全品目のうち 、政府は食料品を最優先してい る(米などの穀物)。 46 全人口を養うための主食品にくわえて、幼い子供たちの食料が一番問題になる。 彼等にはより高 い質と、微量栄養素とエネルギーが濃いものが最優先される。 47 すでに述べたように、政府は多くの学校が新学年度を始めるに当たって、食料の 貯蓄がないと報 告している。 子供一人当り一食200グラムの割り当てとした場合、 米は2万6、000トンが不足 する見込みである。 公衆衛生 48 保健省の能力は厳しい状態で、このような規模で緊急管理をするには経験が不十 分である。 W HOは少なくとも1ー2ケ月の間、管理技術的援助を行わなくてはなら ない。 国際救援物資は北朝鮮 に大量に届くであろうし、WHOの在平壌国連調整官へ の支援は欠くことが出来ない。 49 技術的な援助は栄養、衛生、CDD、疫学の分野、そして研究室で急を要する。 W HO/SEAROの地域アドバイザーは出来るだけ早く保健省に派遣されなくてはなら ない。 50 疫病監視体制はあらゆる災害状況のなかで、特にある病状を予測することが難し い場合に非常に 重要である。 監視所からの特別のデータや、栄養状況に関するデータ 、罹病指標が必要である。 保 健省はこのデータの収集分析体制を設置するのに援助が 必要であるが、しかし保健省は全国にある保健 所を通じて、そのシステムを運営するだ けの人材や組織力を持っているように見える。 51 これと平行して基準の研究所が被災地の主要な場所に建てられるべきであり、そ れは公衆衛生上 重大な病気を確認し排除する為である。 保健省はこれらの検査所を選 択、装備、管理し、見本(標本) を運搬するのに援助が必要である。 全国の保健所が この活動を担当させられるであろう。 52 麻疹は治療水準がハ高いというわりには、問題になるようである。 家を失った 5 0万人のうち、被害を受けた5歳以下の全ての子供たちに10万人分の投薬が必要であ る。 伝染病が 発生している地域の子供たちにワクチン注射をするには調査が必要であ る。53 緊急給水施設は地方 では管理しているようであることが調査団によって確認 されている。 しかし破損したシステムを直す のにかなりの復旧作業が必要である。 政府は主要管と配給管などの給水施設の損害額を49万米ドル と発表している。 政府 はこの段階でWHOが供給した塩素をそれ以上要求していないし、また管井戸 用のポン プも要求しなかった。 時間が経ち、もし通常の給水施設が復旧されなければ、緊急支 給を維 持する能力が欠け、水質や水量も悪化するだろう。 水を媒介する病気が問題に なるであろう。 経口 再水和清の必要性が大きい。 政府は一人につき一週間、相当数 の下痢(赤痢)が起こることを仮定し、 2ー3週間保ちうるぐらいの 経口再水和清3 00万人分をを要請した。 54 栄養問題は今後数ヵ月間、主な健康問題になるであろう。 栄養問題を扱う上で 経験のある国際 機関によって、信用できる有効な監視制度を農村地帯に設置され維持さ れることが必要である。 微量 栄養分不足はこの計画の一部として調査対処する必要が ある。 外務省は被災家庭に対し、5万トンの 粉末ミルクを要請した。 粉末ミルクを 供給する必要性は包括的な栄養計画の一部として注意深く検討 する必要がある。 この ような計画は長期にわたる栄養問題を取り扱うべきだ。 なぜならそれは農村 地帯では 栄養不足が基本問題だからである。 55 薬品は緊急的に要求されているのは間違いない。 適切薬品は現在、新緊急医療 セットとして十 分支給可能である。 もし50万人が緊急援助を必要とするならば、一 ケ月 当たり17セットが必要であり、少なくとも三ケ月分は必要である。破損した工場の生 産 能力が見積もられれば、より詳細な評価が出来る。 56 保健省が提供した項目には、緊急援助計画の下で当然供与可能な物が入っていな いため、医療援 助ハについては注意深く調査する必要がある。 詳細な仕様は提供され てい ないが、もし提供者が開発援助の一部分としてそれらを提供するならば集める必要があ る。 もし、こ の段階で設備が与えられるならば、各里にある診療所と病院の標準設備 リストに従うものでなくてはい けない。 57 中国とインド政府に伝統的な薬品(漢方薬)を緊急援助品として提供するよう要 請することはで きるだろう。 58 政府は深刻な燃料不足を報告してきた。 もし、その不足を緩和することが出来 なければ、港か ら入港した救援物資の配給と同時に、余剰食料の不足地域への分配に支 障が出てくるだろう。 それは また、最も重要な施設とインフラの復旧を遅らすことに なる。 このことは国連調査団が訪れた地域に あるわずかな数のトラックと機械しかな いことによって実証された。 すなわち、燃料を備えることが 緊急対策において、最重 要部分の一つである。 農業 59 当面、そして長期の食料不足を克服するために、緊急な対策が必要である。その 中には食料を運 搬し、配給するための燃料の供給であり、洪水直後に栽培した作物肥料 の投入や、来年の栽培期のため の準備を始めることである。 教育 60 政府は損害を受けていない政府の印刷施設で、流失した教科書、参考書、資料、 そしてノートを 再印刷するための紙を緊急要請した。 その事業のために、国内の資源 を動員したが、まだ1、000 トンの紙と100トンのマニラ紙が不足しているとみて いる。61 上に述べた中で、北朝鮮政府は食 料、住宅(衣類)、医療問題(薬品)が 最緊急課題としている。 国連による最初の支援アピールの内訳 担当機関 合計 US$ UNICEF 4、462、000 WHO 2、000、000 WFP 7、250、250 DHA/UNDP 2、000、000 合計 15、712、250 62 最初の対応として、また、当面の計画から長期にわたる救援計画に対して、新た な詳細な事実が 得られるまで、 国連の関係機関は各国から救援資金が得られることを 条件として、次のようなものを 提供する。 UNICEF 当面の救援内容(3ヵ月間): 63 最も深刻な被害を受けた地域の幼い子供たちを養うための食料補充。 約10万 世帯が家を流出 され崩壊した。その中でのおよそ11%に当たる5万5、000人は年 齢5歳以下の子供たちである。 計画されている食料補充はトウモロコシや大豆を混ぜ たものが保育園などを通じて渡される。 64 年齢5歳以下の子供の麻疹予防。 これは最も被害の大きかった人口235万人 の平安北道と、 人口240万人の黄海北道で最初に行わなければならない。 その二つ の地域では5歳以下の子供はお よそ65万人いる。 65 保健省が下痢性の病気などの発生に対応する能力と必要器具を兼ね備えさせるこ と。 これは経 口再水和清の配給も含まれる。 食料補給 被災した家族の中で年齢5歳以下の子供たちに的をしぼる: 150グラム X 5万5、000人 = 8.25トン/1日 最初の3ヵ月間分の供給 = 745トン X 4.50ドル/1トン = 33万5、250ドル 麻疹予防 平安北道と黄海北道にいる5歳以下の子供全員を対象にした場合。 ワクチン65万服(回)分、 10回 分=1.50ドルとした場合 =9万7、500ドル 使い捨て注射器65万個、 1個=0.10ドルとした場合 =6万5、000ドル ビタミンA(カプセル)65万個 1、000個=20ドル =1、300ドル 経口再水和清 各道に戦略備蓄量を供給 25万リットルの 経口再水和清 を戦略備蓄として、 1、000リットルにつき=80ドル 2万ド ル 輸送費を併せ四捨五入した小計 52万ドル 食料補給 被災地における5歳以下の子供の半数を的に; 150グラム X 26万人 = 39トン/1日 6ヵ 月分の供給=6x1、200(1ヵ月分)x450ドル/1トン =324万ドル 麻疹予防 平安北道と黄海北道を除く地域の5歳以下の子供 ワクチン260万回分、 10回分=1.50ドルとし た場合 =39万ドル 使い捨て注射器260万個、 1個=0.10ドルとした場合 =26万ドル ビタミンA(カプセル)260万個 1、000個=20ドル =5万2、000ドル 小計 394万2、000ドル 経口再水和清 状況によって必要とする。 合計 446万2、000ドル WHO 66 WHOすでに必需薬品と粉末塩素の至急購入に10万ドルを提供した。 必需薬品 1ヵ月50セットの医療セットを必要とし、3ヵ月分とした場合(1セット=1万ドル )=150万ド ル 被害を受けた300ケ所の診療所への基本的な医療器具; 1ケ所診療所につき=150ドル: 4万5、 000ドル 検査所支援 145ケ所の地方検査所に試薬と器具、それにWHOの専門家を1週間派遣した場合、 各検査所ごとに 550ドル: 8万ドル 水道と衛生 粉末塩素とCDDに要する二人のWHO専門家、それに1週間分の水の供給 15万ドル 監視制度と報告体制(栄養、水質、病原菌規制、羅患率など) 資材と養成 WHOのメンバー1週間分 7万5、000ドル 公衆衛生に対する基本的な行政、技術的支援:紙、ペン。 WHOのスタッフ3ヵ月間 5万ドル 伝統的な薬品 基本料 7万ドル 運送料 3万ドル 合計 200万ドル WFP 67 最初の対策として、50万人の被災者に1人当たり1日450グラムの米と15 グラムの植物油 を供給して支援することが勧告される。 この家を失った人々の数と地 域については別紙1を参照。 68 朝鮮民主主義共和国政府は全ての国際輸送、保管料、取扱料を負担する。 また 、貨物の荷降ろ しに全ての税金や入国税関などを省く処置を施すものと理解される。 食料品はこの報告書の別紙1に 記載された被災者に分配される。 69 WFPは活動期間(およそ3ヵ月間)北朝鮮に国際的食料監視員1名を配置する ことを提案する。 それにかかる費用は推定約7万5、000ドルである。 内訳は給 料、DSA、国際旅行費(移動)、 国内旅行費、通信、事務所の支援、本部の支援など である。 これらは総救援費用の約1%に当たる (総救援費用は約725万250ドル である)。 70 米は東南アジアで購入されるものと期待される(インデイカ米ブレンド約35% )。 植物油は ビタミンA強化で、厳寒の冬の間、人々が病気への抵抗力をつけるよう にする。 費用は次のように見積もられる: 米 50万人 x 450g/1人当 x 90日 = 2万250トン 調達費用 (FOB)1トンにつき2 75ドル= 556万8、750ドル 船舶輸送費 1トンにつき45ドル= 91万1、250ドル 小計 = 648万ドル 植物油 50万人 x 15g/1人当 x 90日 = 675トン 調達費用 (FOB)1トンにつき900ド ル= 60万7、500ドル 船舶輸送費 1トンにつき130ドル= 87万750ドル 小計 = 695万250ドル 監視費用 = 7万5、000ドル 合計 = 725万250ドル DHAとUNDP 71 深刻な被害を受けた人々への毛布と家庭用品配給はピョンヤンにあるUNRCを 通して合同プロ ジェクトとして行われる。 これらの物資の中国での調達と輸送と分配 については在北朝鮮UNDPと 在中国UNDPとの緊密な協力のもと行われる。 当面 の対策として、まず最も被害を受けた2万世帯 の家庭へ1家族およそ100ドル分を目 標とする。 これには輸送、調達支援、それに監視などが含ま れる。 資金の得られる 場合、支援する家庭の範囲は広がる。 合計 = 200万ドル FAO 72 FAOは農業部門への洪水の与える影響についての基礎調査を行うため、DHA の調査団に参加 した。 政府が50億ドル以上の被害が農業部門に及んだと推定してい ることを考慮すると、(これは 全緊急必要額の3分の1にあたる) FAOは緊急時に 必要な物資の包括的査定書を国際提供団体に提 出するため、特別救援活動隊から係員を 派遣している。 「別紙1」 道別被害の内訳 被害を受けた道は、平安南道、平安北道、慈江道、黄海南道、黄海北道、江原道、げん 咸鏡南道、咸鏡 北道、それに梁江道である。 各々の道はいくつもの郡と里に分かれる (通常、里は1つ以上)。 道 被災者数 家を失った人 (被害にあった郡と里) 平安南道 537、000 17、130 (20郡、226里) 平安北道 2、048、000 192、000 (24郡、394里) 慈江道 828、000 78、250 (18郡、208里) 黄海南道 482、000 4、635 (15郡、151里) 黄海北道 690、000 99、840 (14郡、143里) 江原道 155、000 46、155 (12郡、126里) 咸鏡南道 80、000 4、050 (2郡、24里) 咸鏡北道 229、000 840 (8郡、62里) 両江道 157、000 38、280 (7郡、57里)